介護日誌

 停年を迎えた夫婦が、ある日突然生活が一変した。
夫は、何の事か分からず ただ、うろうろする女房は作る事を忘れ黙ってお勝手に立っている、
何も気力のない妻をどうしたのか理解できずどうしたの?
何も言わなくなった妻、事の重要性を悟り、この先、どう一緒に付き合っていくか、
 日々主婦業をしながら、答えを探していく闘病活動を綴ったものです
 この病気は、普通の人が普通に生活していて、何不自由ない生活から、ある日突然起こった、
としかいいようのない病気でした。
 このような事が仮にあなたの連れ合いに起きたとしたらちょっと、参考にしていただければ幸
いと思います。

 病気の名前は うつ です。

 では、夫婦の普段の生活がどういうものか少し説明しておきます。なぜならものさしと
考えてもらう意味で、載せてみました。
 
 会社務めを58歳まで勤めたとき、ある日突然リストラと言う嵐に見舞われました。
その後訓練学校へ行ったり、次の会社へ勤めたりして3年が過ぎようやく年金生活に入ったの
でした。
  男には、以前から、農家の後継ぎとして、少しばかりの農地がありました、生活の足しにと
野菜を蒔いたり、植えたりする事が趣味の一つでした。
 権兵衛が種蒔き、カラスがほじくる とか言う諺ではないですが、まさに
 男が種蒔き、女房が草をむしる そんな感じで野菜を育てていました。

 女房には趣味がありました、カラオケです、もう10年くらい習っています、うまいかと言うと
首をかしげる私に、昔から思うとうまくなったろう。そういいきるのが癖でした。
もう一つは、フラダンスでした、月に2回、近くの集会所へ習いに行きます、1ヶ月がすぐ来ちゃうと
いいながら、教室での愚痴を言ってました
いつも、みんな忘れているので、又はじめからとかで進めない事や、月謝が高いだの、だれそれが
休むんだってとか、やれ衣装を買うといえば、先生がお抱えの衣装やさんから、揃えないと舞台に
出演させないとか、いろいろサークルで起こった出来事を話しかけてくる
 
 本当はうるさいのですが、聞き役に回ります、半分は上の空
女房は嫁ついで来てから、勤めた事がないので世間が狭くなっているのは確かでこの辺の農家の
嫁さんはそれで通っていた、仕事は専業主婦、適当に、草をむしったり家の周りをかたずけたりで
気ままに過ごしている・・・と男は思っている。
 只 世の中が激しく変わってきている中で、、村も変わってきた。
新しい時代の人たちが家族を持ち始めてきていたのです・・・・・しかも共稼ぎ
 あの嫁さんは行き会っても挨拶もしないとか、
子供が近くにいるのにちっとも来ない、とか
 2番目の娘に、子供が生まれる、2ヶ月くらい居るから部屋はどうするとか、
子供の服が買ってない
 足がまだ治っていないので早く直さなくてはとか
婦人会の会長が回ってくるのでどうしようかとか、
 あなたはいつも出かけているから赤ちゃんのお風呂は誰が入れるとか、
あらゆる事で気を揉んでいた。

 そんな事はちっとも知らず、男は今日も村の事で、朝から出かけていた。
男の趣味は、きりえ と 竹細工 さらには生涯学習、1%事業と (これは市から税金の補助を
もらい、荒地を開墾し、ブルーベリーを育てその過程で、村の中の世代交流を図る と言う
プロジエクトの事です)
 只の手伝いならばどんなに忙しくも休めばいい事だが、この男、馬鹿な事に
すべての事務局を引き受けていたのです。皆さん、救いようがないですよね


そのため、奥さんはいつも借り出されて腹の中では不満がたまってきていたのでしょうね。
こんな背景が病気の発端を作るきっかけになったのです。   


 10月××日

 朝起きて、普段ならテレビをを点けてお勝手をするのに、ここ数日テレビも点けない
決まって、煮物が出てくるのに煮物は出てこない、買ってきた佃煮、ゆでた野菜等が並んでいる
あんまり話をしなくなった、親しい人でも避けるようになった
当たり前の会話はするが以前のように笑うことがない
寝る前に、精神科で調合してくれた薬を飲み、すぐに寝るが1時間くらいしか寝られない
いつもだと、有ご飯を食べた後、横になって1時間くらい寝る(昼寝と呼んでいる)
のにぜんぜん眠くない、夕方になると頭が重くなってくる
ほんの少しのたわいない言葉にも、神経を研ぎ澄ませて言葉を選んでいる、見る見るやせ細っていく

 O型でどんな事にも動じない女房、話の中へいつの間にか入り込んで  わっはははは
と笑いこける女房・・・・だがそこには別人がいた

 一人でいると黙ってコタツに座っている、好きなテレビも自分からかける事がなくなった
黙ってコタツに入っている、好きだったカラオケも歌いたくないといって辞めてきた
 たまに声を出して歌わないと歌を忘れちゃうよ
そうだね  そうだね を繰り返す女房、まだ前と変わらないのは、オナラが出る事だけ  と
さびしそうに笑った
 神経が研ぎ澄まされているように天井を見たり、焦点のない目で何処とは無しに 見ている
一体どうしろと言うのだろう、何をしたらいいのだろう
 もう目がはなせないとト思った

続く

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